10年前に比べると、スマホやPCで文章を書いたり読んだりすることがとても増えた。でも私はもともと紙媒体のデザイナーで、やっぱり紙の手触りとか匂いとかが好き。今回オンリーフリーペーパー(http://onlyfreepaper.com/)さんのサービスを利用して、全国のフリーペーパーを取り寄せたところ、もう楽しくてしかたがない!もともとは「見出しやレイアウトの参考資料になれば」なんて思いもあったのだけれど、見ているうちに内容に惹きつけられてついつい読んでしまっている。100誌以上届いたフリーペーパーには、手作り感溢れる手書きのペラものもあれば、有名なミュージシャンの写真が載った立派な冊子までさまざま。読んでいて面白いのは、どちらかといえば個人または数人で発行しているタイプのもの。広告もついてなくて本当に好きなことを自由に書いているので、会ったこともないのに発行者の人柄や嗜好が伝わってきておもしろい。

簡単に作れるし、読んで面白い。フリーペーパーっていいじゃん!そこで「私も何か個人的なフリーペーパーを発行してみよう!」と思ったのですが、ここで問題発生。

「何について書けばいいのか分からない」

自分の中に「誰かに伝えたい!」というモノが見つからないのです。チラシやパンフレットの制作を仕事にしていて、クライアントの原稿をリライトすることもあるのに、いざ自分の個人的なことを発信しようとすると途端に思考停止。マインドマップとかブレインストーミングとかやっても、どうもしっくりこない。頭のどこかで"カッコいいもの"とか"面白いもの"を作ろうという見栄があるからかなとも考えたけど、それも違う気がする。なぜだかは分からないけどネタが浮かばない....

そんな感じで数日が経ち、私はあることに気づいた。

「フリーペーパーを発行する」ということは、自分の中の「好き」とか「こだわり」とか「気になること」を誰かに伝わるようにすること。当然、私にだってそういうモノはあるはず。でも見つけられない。ということは、つまりセンサーが壊れているということだ。

振り返ってみれば、私はここ数年クライアントや家族や会社の経営、資格取得などに関心を向ける時間が長すぎて、自分の内面に関心を向けることはほとんどなかった。自分の外側に関心を向けるのは別に悪いことではないけれど、センサーが外側に向けて固定されてしまっていて、内面に向ける事ができなくなっているということは無いだろうか。

以前参加したセミナーで「自分の外側に対して対応してばかりだと、自分の内側が置いてけぼりになる」というような話を聞いた事がある。その時はフリーランスで働いていて自由な時間も多く、カフェで本を読んだり自問自答する時間も多かったので「自分には関係ない」と思って聞き流していたが、今の私はまさにその状況だ。

この状況を変えるためには、今までなんとなくやっていた事に対して少し立ち止まって「自分はどう感じてるかな」と自分に聞いてみたり、口や態度に出さないとしても「ちょっと悲しいな」とか「なんとなく嫌な感じ」という感覚を無視しないで自分の中で味わってみることが大事なんじゃないだろうか。そうやって自分の気持ちに関心を向けてあげることで、センサーを内側に向ける感覚を取り戻していく。センサーが内側に向くようになれば、自分の「好き」にも気づけるようになるのではないか。

フリーペーパーのアイデアを考えるということは、自分の内面から何かを見つけること。

そのためには、まず私が私に関心を持つことが大切なんだと気づいた。