伝わるメッセージと伝わらないメッセージ

「相手の立場になって考える」これは円滑なコミュニケーションの基本です。しかし実践するのは簡単ではありません。
私たちは、つい自分の目線で語りがちだからです。今回は、就業開拓を例にして「伝わるメッセージ・伝わらないメッセージ」について考えてみてもらいたいと思います。

伝わるのは読み手の目線に合わせたメッセージ

知らない単語は使わない

以前の記事(デザインもコミュニケーション)にも書きましたが、文章では「読み手の知らない単語は使わない」が基本です。もし読み手が知らない単語を使う場合には、できるだけ早く意味を説明する必要があります。できるだけ早くというのは、知らない単語を使ったらすぐ後の文章で説明するという意味です。※印をつけて最後に解説するというのは、読み手のストレスになり読み進めるモチベーションを低下させてしまいます。

シルバー人材センターで注意すべき単語のひとつは「就業」です。あまりに日常的な単語なので、対外的な会話や文章でもつい使ってしまいがちです。しかし「就業」は一般的には馴染みのない単語です。「働く」や「仕事に就く」などと言い換えると、読み手が理解しやすくなります

開拓されたい人はいない

職員や会員の名刺に「就業開拓委員」や「就業開拓担当」などの肩書きをつけていませんか?先ほど就業という言葉について馴染みがないと書きましたが、開拓という単語にも注意が必要です。「開拓」という単語自体は一般的ですしネガティブなものではありませんが、「就業開拓」は明らかにシルバー人材センターの立場から発せられる言葉です。

「就業開拓担当」と書かれた名刺を受け取った側からすれば、目の前の人が開拓する人ならば、自分は開拓されるターゲットなのだと認識します。開拓されたい人なんていませんよね。なので無意識に「開拓されまい」と防御の心理状態になってしまいます。これでは信頼関係を築いて仕事を受注するのは難しくなってしまうと思いませんか?

相手の立場や目線に合わせたメッセージにするのであれば、肩書きは「就業開拓担当」ではなく「人材紹介担当」や「地元企業サポート係」などになるのではないでしょうか。名刺を受け取った側が「この人は自分を助けようとしている人なんだな」「何か手伝ってくれそうだな」と認識できる肩書きを皆さんで考えてみてください。

肩書きが変わることで担当者の意識が変わり、行動までが変化するということはよくあります。これまで「いかに契約を獲得するか」に意識が向いていた人が「地元企業をどうやってサポートするか」「シルバー人材センターが地域にどう貢献できるか」という意識に変わることで、相手に与える印象が変わり、結果的に就業開拓がうまくいく、ということもあるかもしれません。

センターの紹介も読み手の目線に合わせよう

シルバー人材センターを紹介するとき「健康で働く意欲のある高齢者に、仕事と生きがいを提供する非営利法人です」といったメッセージを使うことが多いと思います。これはシルバー人材センターという団体を紹介するにはとても簡潔で分かりやすいメッセージです。

ただ同じメッセージを企業に渡すチラシや資料にも使ってはいませんか?仕事を発注する企業の目線になってみると、シルバーに仕事を発注する目的は高齢者に仕事と生きがいを提供することではないですよね。そこに気づかずに会員募集と同じメッセージを使い回してしまうと、企業側へ伝わるメッセージはとても弱いものになってしまいます。

弊社がデザインさせていただいた就業開拓パンフレットでは、シルバー人材センターを次のように紹介しています。

私たちシルバー人材センターは、健康で働く意欲のある会員と地元企業をつなぎ、地域の振興に貢献する非営利法人です。

打ち合わせの段階でシルバー人材センターの信頼感を高めたいというご要望があったので、会員のために仕事を紹介する団体ではなく、逆に企業に高齢者を紹介するだけの団体でもなく、会員と地元企業をつなぐ公益性の高い法人であるということが伝わるようにメッセージを考えました。

これはあくまでも一例なので、これから就業開拓のチラシを作る際は、読み手の目線(理解できる言葉と関心あること)を想像しながら、読み手の心に響くメッセージを考えてもらえたらと思います。